第3話「伝説」
ぷよカップの予選は2勝4負という散々たるものでした。
「なぜ私は大阪にいるのか」
「なぜぷよぷよeスポーツというゲームをしているのか」
「そもそもぷよぷよというゲームは楽しめればそれでいいんじゃないか?」
「ゲームなのになんでこんな思いをしているんだ?」
様々な想いが私の中を走馬灯のように駆け巡り、
延々とダートを駆け回ります。
時間にすると1分、いや30秒...はたまた15秒程度の短い時間だったのかもしれません。
しかし、紛れもなく私が居た所は地獄でした。
そんな中私の目の前にある施設が現れました。
「ぷよぷよ茶屋」
その施設には軽食と、ソフトドリンク
そして...アルコール飲料が売っていたのです。
伝説が
始まりました
私は"救済"を求め、ぷよぷよ茶屋に駆け寄りました。
横には同じブロックでしのぎを削った428選手がいます。
「昨日の敵は今日の友達」と昔のアニメでも歌われていた通り、私は横にいる428と確かな友情を感じていました。
程なく関東のぼのさんも現れて、ぷよカップの会場で3名による飲み会が開催されました。
乾杯をする直前、日本酒を片手に持った精悍な男性が現れました。
そう、日本eスポーツ連合公認プロゲーマー「ヨダソウマ」です。
私は彼と面識はなく、2日ほど前に相互フォローになったばかりなのですが。
お互い挨拶をすませると、当然のように飲み始めました。
出会って5秒で飲みが始まったのは初めての事でしたが、お互い特に気にすることなく飲みすすめました。
しばらくすると、関東のshocoleや名古屋の太陽の申し子、すけぞー
飲みには参加していませんでしたが後ろにきんぐ、あらん、レインなど
ぷよカップ参加者の和が広まっていました。
暫くして、お酒がなくなったので買いに行くというぼのさん、428さんに私の分も買ってきてくれと1000円を渡しました。
程なくしてブースに並ぶぼのさんが私の所に小走りでやって来ました。
「ぢおさん!もう1000円下さい!!」
意味がよく分からなかったので聞き直すと
「皆で飲むために瓶で買ってきます!!」
本当に意味がよく分からなくて1000円を渡してしまったところ、5分後に私の2000円は2本の酒瓶になっていました。
ぷよカップの放送でヨダソウマが持って行った酒瓶です。
余談ですが、
ぼのさんはこの後更に私から1000円を騙し取ろうとしましたがなんとか死守しました。
第4話「本選」
ぷよぷよカップの本選の並びを見て、私は正直なところ今回プロは生まれないな...と
そう思っていました。
参加者のレベルが過去最高と言っても過言ではない事に加えどのブロックもマッキー、delta、fron、live、ぴぽにあ、等の強力なプロが行く手を阻みます。
どこか、安心している自分が居ました。
自分より先にプロになるプレイヤーが現れる度、私は焦っていたのです。
余裕の表情でお酒を飲みながら、皆で優勝者予想クイズをしたり、気になる試合を直接観戦しに行ったりしました。
大会は現場にいる限りではつつがなく進行し、気づけばベスト8
アマチュアの選手は...
沖縄の「たーち」
そして...広島の「いさぽよおいう」(くじら)
です。
この2人を見た瞬間私にある想いが産まれました。
(絶対俺より先にプロになって欲しくない)
まだ同世代とはいえ沖縄にいるたーちは薄かったのですが、
くじらさんに対しては煮えたぎるような感情でした。
僕の想いを他所に試合は進行していきます。
先に対戦した「たーち」vs「live」ですが
フルセット1本先取の激闘の末、liveが勝利を納めました。
たーちに関してはたーちプロが見たかったという心情もあり複雑な気分でした。
そして来たる決戦
「fron」 vs 「くじら」
(俺より先にプロになって欲しくない)
という私の想いは
(くじら負けろ)へと変貌していました。
しかし、私はプロゲーマーです。
懸命に戦っている選手の負けを望むような、そんなスポーツマンシップを無視した事はできません。
なんとか、試合が始まる前には
(フロン頑張れ!)
という想いに5%くらいは持っていくことが出来ました。
そして始まった激闘
お互い1歩も譲らない、プライドをかけた闘い
後にfronプロはあの闘いをこう振り返りました。
「死ぬほど緊張した...」
それほどまでに、シチュエーションも
何より対戦相手も
特異だったのでしょう。
結果は
燃え上がるような
地面をマグマに変えてしまうような
そんな戦いの末
そんな中でどこか
冷静さを持っていた
くじらさんが制しました。
私の中で色々な感情が渦巻き
後ろの席で
「嫌だァァァァァァァァーーーー」
と叫んでしまったことを良く覚えています。
エピローグへ続く
ヘッドホン被ったままであの広い会場で端っこにいたお前の叫び声は聞こえた。あのヘッドホン結構周りの声聞こえなくなるのに