ぷよぷよ最強リーグ、ぴぽにあさんの復活がうれしくて書いてしまいました。前にも増して思い込みが激しくて、正直違うんじゃないかってところもあると思いますが、たいして強くもない一ぷよらーの文章です。敬称略ですがご容赦を。
ぷよぷよ最強リーグシーズン1。マッキーとmomokenは誰も登れぬ天上の高みで激しく争い、僅差でマッキーが優勝となった。
マッキーとmomokenは両者4勝1敗。明らかに2強である。最強リーグは誰が最強なのかを決める闘いだ。だから興味は当然、マッキーとmomokenはどちらが強いのか? となる。ただしもうひとつ、大事な問いかけがある。それは、マッキーとmomokenを倒せるのは誰だ? というものだ。
彼らを打ち倒す筆頭候補はぴぽにあであった。彼はマッキーに土をつけていた。ぴぽにあの豪快な「ちぎらないぷよ」の攻めにマッキーは崩れ、ペースをつかめないままぴぽにあに押し切られていた。
ぴぽにあならきっとやってくれる! 彼はそう思わせる魅力に満ちている。
日々成長する彼のぷよが劇的進化をとげてマッキーとmomokenを粉砕する!
ファンの甘い期待は、ぴぽにあのシーズン2開幕初戦でいきなり本物になった。
ぴぽにあ 15-4 momoken
30本先取の途中経過だ。あまりに非現実的なスコアだった。
momokenは決して悪いぷよを打っていないという。ぴぽにあが神がかっていた。
ちぎらないぷよでスピード勝ちし、momokenのわずかな隙に適量の攻撃を重ねて有利を広げていく。あらゆる局面で相手を上回って勝つ、ぴぽにあはまるでmomokenみたいな横綱相撲でmomokenをコテンパンにしていた。なんだこれ、夢か!?
ぴぽにあは組みをアップデートしてきた。超人的な集中力で相手の行動を察知し、機先を取って攻め倒す。あのmomokenが手も足もでない。ただこれはおそろしく神経を使うのだという。だから使いすぎると脳みそがへとへとになるらしい。
そうなるまえに、ぴぽにあはモードを変えようとした。
momokenはもう逆転は不可能とひらきなおり、かえって心は落ち着いた。
結果。
ぴぽにあ 21-30 momoken
夢は夢でも悪夢となった。
momokenは終始自分のぷよをしていた。momokenはぴぽにあの組みを見て、途中からかなり乱れてきたと思ったらしい。闘いが終わってのコメントは「勝てちゃった」と。
要するに、ぴぽにあは全速力で突っ走り、ひとりで盛大にすっころんだのだ。
ぴぽにあはこの大転倒からなかなか立ち上がれなかった。
ところで、ぷよの消え方には2通りある。
ぷよとぷよの間に違う色のぷよを挟んで消せば、上下のぷよがつながる。これが挟み込み。
もうひとつ、ぷよとぷよをずらして置けば、違う色のぷよが消えたあとに、左右にぷよがつながる。これが階段。
マッキーやmomokenが主戦法としているGTRは、おもには挟み込み中心に組まれている。挟み込みは挟まれているぷよのあたりで小さくぷよが動く。静かで、正確で、クレバーに連鎖が進行する。
momokenの自戦解説もクールで理知的だ。相手の4連鎖が見えたから、色を付け足して4ダブを組んで……。どこまでも理詰めでわかりやすい。彼は把握して、理解してぷよを進める。これぞ王者のぷよというべき安定感がある。
いっぽう、ぴぽにあの組む、ちぎらないぷよ、の連鎖尾にはしばしば階段が現れる。得意とするメリ土台は、3列目4段目のぷよが4列目のぷよとつながって消え、上に乗ったぷよがぐわっと大胆に動く、グレートに動く。
この段差を生む土台が生きていれば、そのうえにどんどんぷよを積むことができる。それを消して攻撃し、また積み上げる。大胆なるぷよの生々流転がぴぽにあの真骨頂だ。ただ、豪快に動くだけに暴発の危険ととなりあわせで、気を抜くとすぐに崩れてしまう。
彼のぷよは、豪腕ゆえに、実に繊細なコントロールが要求されるのだ。
ぴぽにあの自戦解説は熱く、感覚的なことばがならぶ。とはいえ彼も相手のフィールドを見ていないわけではない。しっかり凝視して対応する。ただ、おそらく戦術の主眼がそこにはないのだ。彼は理の外側で闘う部分が大きい。
そもそもぷよぷよは理で完全にわかるものではない。コンマ何秒かの間にすべてを見切るのは人間の能力では不可能だ。
自分のフィールド、相手のフィールド、自ツモ、相手ツモ、画面外、そして今後の展開の予測。隅々まで把握することはできない。
うまいプレイヤーは上手に脳のリソースを振り分けて刻々と変わる状況に対応する。これはほとんど無意識に行われる。上級者はぷよに関わるあらゆる戦術や理論を、自然な所作になるまで練習を繰り返す。技術を高度な技芸にしないと、とてもプロにはなれない。
ぷよぷよは、瞬間的な判断の精度が勝負に直結する、唯一無二のゲームなのだ。
上級者は相手のリソースを削りに行く。意表をついた速攻や、常識外の崩し対応、だまし本線発火など、ときには理詰めではない攻撃をして、相手のペースを狂わせる。
それは無意識への攻撃だ。無意識にやっていることは容易には修正できない。ダメージを受けると尾をひいてしまう。
ぴぽにあはそれを誰よりもわかっているプレイヤーだろう。容易に把握できない積みで相手のリソースを奪い、理解困難な攻撃を仕掛ける。だから彼は感覚を重視する。相手の無意識を感じ取り、相手の信じるぷよそのものの基礎から揺さぶっていくのだ。
ただ、これは諸刃の剣だ。
難しい組みは自らのリソースも奪い、結果、未知の領域が増える。ときには見えないところに飛び込んでいくような勝負手が求められる。感覚では勝てると言っている、だがそれは理では確かめきれない。
深い闇に身を投げるや否や。決断は一瞬。
もし、恐怖に身がすくんでいたら? チャンスはもう過ぎ去ってしまう。
転倒し、バランスを崩したぴぽにあ。
第2シーズンの第2戦、対SAKI。
ぴぽにあは29-22と王手をかけた。しかしSAKIは百戦錬磨、ここから勝ちきるのも容易ではないことを知っている。落ち着いた粘り腰のぷよでじりじりと勝ちを積み上げ、心理的にぴぽにあを追い詰めていく。
29-26となった。ぴぽにあはmomoken戦の悪夢を思い出していたのか。
中盤にSAKIの放った4連催促を、ぴぽにあは適確に5連鎖対応した。残しも良い。SAKIは中途半端に本線を打つしかない。
ここまで悪戦苦闘もあったけど、あとはぴぽにあが発火して勝ちだね、と。誰もが思った瞬間。
ぴぽにあは黄ダブの処理を誤り、暴発する形を作ってしまう。
彼としてはありえない、イージーなミスがここで出た。
ぴぽにあのリソースは大きく壊れていた。
追い詰められる展開、連戦の疲れ、プレッシャー、あらゆるものがリソースを削り、大事なところで抜けがでてしまった。
その後も立て直せず、29-30でぴぽにあは破れた。異変はあきらかだった。
それでもまだ2敗。シーズン2はリーグ戦を2周するからあと8戦ある。ぴぽにあが復活して勝ちまくり、優勝戦線に戻ってくることを期待していた。だがその後も彼のぷよは精彩を欠き、大事なところで勝ちきれずに星を落とし、残念ながら降格争いを話題にするしかなくなってしまった。
そして第9戦、deltaに破れ、彼ははやばやと降格が決まってしまった。
最後の闘いとなるともくん戦に、彼は剃髪姿で現れた。ただそれは果たして決意の現れであったのだろうか。
単なるポーズのように見えなくもなかった。なぜなら彼は髪の毛よりもはるかに大事なものを背負っているのだから。
eスポーツチーム思考行結の看板、最強リーガーとしての誇り、なによりも、ぷよ一本でやっていくと決め、ぷよを人生の主軸においたその重み。坊主頭で示さなくても、彼の覚悟は痛いほどわかる。
シーズン2の最終戦、すでにほぼ優勝を決めていた全勝のmomokenと、1敗のマッキーの対決。マッキーが気魄のぷよでmomokenを倒し、格付けはシーズン3以降へ持ち越された。
ぴぽにあがシーズン3に参加するためには、シーズン3への昇格トーナメントを勝ち上がらなければならない。ダブルイリミネーションだから、1回だけ負けられる。だが2回負けるともうない。
トーナメントに参加した者は、誰があがっても最強リーガーとして足るであろう、鬼神のごとき8人。それでもぴぽにあは勝ち上がり、決勝の30先に進んだ。相手はヨダソウマ。彼はずっと、後ろから追いかけるチャレンジャーであったが、気がつくと大事な場面で必ず勝利し、いつしか最強格に届く存在になっていた。天上の闘技場へ踏み入る階段の最後の一歩、絶対に勝ちたい闘いだ。
いまだ立ち直りに遠いぴぽにあ。ヨダソウマは相手の無意識を揺さぶる闘いが抜群にうまい。見逃してくれるはずもない。
最初は一進一退で進んだ闘いも次第に差がつき、形勢は加速度的にヨダソウマへ傾いていく。30-21にてヨダソウマが念願の切符を手にいれた。
ぴぽにあ、いよいよほんとうに後がなくなった。
昇格トーナメントのルーザーズ。ウィナーズの決勝で敗れたぴぽにあは、ルーザーズのトーナメントから勝ち上がってくる者を待っていた。
壮絶な潰し合いから姿を見せたのはSAKI。シーズン2の最終戦でdeltaとの降格をかけた死闘に破れ、地獄に落とされた。昇格トーナメントのウィナーズでは1回戦でヨダソウマに負けていた。SAKIもぴぽにあと同じく後がない。
このふたりのどちらかがいなくなるなんて。解説のマッキーも思わず絶句する。
SAKIは後折りから豊かで攻撃的な中盤戦を組んでいくのを好む。いくつもの選択肢を使い分け鋭く相手を刺していく。一方、ぷよぷよは理だけではないと言う。大きく崩した捨て身の攻撃もやる、序盤の速攻もある。いつでも食いついてやる、油断を許さないぷよはぴぽにあのリソースをごりごりと削っていく。
ぴぽにあは呑まれていた。SAKIのぷよは変幻自在、1、2手で大きく姿を変える。対応も追いつかず、本線を打たせてもくれない。SAKIはミスなく進め、ぴぽにあが自滅することがつづき、スコアは 18-24 となった。
SAKIはメンタル強者と言われる。負けを引きずらない。未来があるという信念でここに臨んでいた。果たしてぴぽにあに未来は想像できたであろうか。
もし負けたら? そんなことは考えないかもしれない。ただ、最強リーグが熱狂的に進んでいく陰で、選手ではなく裏方としてサポートすることにぴぽにあは耐えられるのだろうか。
ぴぽにあが潰れる。一瞬危険な幻覚を見る。
彼は修行僧のように瞑目した。
激闘と激闘のわずかな狭間に天をあおぐ。
あのとき彼の心に浮かんだのはどのような想いだったのだろう。
ぴぽにあは打った。
ほんの少し中盤のやりとりをしただけで、すぐに先打ち10連鎖66000点。上級者の先打ちとしては小さい。SAKIが中盤に寄りすぎて、本線が組みきれないと予測した。しかしそれは正しいのか?
極めて難しい判断である。わずかな見間違えも許されない。まさかの良ツモや奇跡のテクニックで容易にくつがえることもある。だが、彼は自らの感性に殉じた。暗闇に勇気を持って身を投げたのだ。
SAKIは必死に発火を試みるが届かず、ぴぽにあがわずかに息を吹き返す。
ぎこちなくも、ぴぽにあは攻めはじめた。
決して本調子ではない。だが迷いがなくなった。
速攻4連、即断の2連。攻撃が刺さり始める。
SAKIも崩れない。手を厚くして対抗する。それでもぴぽにあの手は次第に伸びてくる。ここにきてようやく感性と理性が噛み合い出す。ぴぽにあはやっと立ち上がり、勇敢な心を取り戻す。
27-27、ついにぴぽにあは追いつき、意地と意地、互いの信念を賭けた闘いがはじまる。
28-28、29-29。泥沼で手を組み合って力比べをしているかのように。中盤でねじ伏せようと死力を尽くし、とうとう勝負は最後の1先となった。
お互い良形を組み合ってからの中盤戦、ぴぽにあは重い4連鎖催促を見つけ出し、SAKIはわずかに対応が届かなかった。SAKIはおじゃまぷよの沼に沈んだ。
傷つき、ふらつきながら、最後に立っていたのはぴぽにあであった。
振り返ると、SAKIには起死回生の手が存在していた。ただし、その瞬間にそれを見いだすことはできなかった。
残酷なほどぷよぷよのゲーム性は鋭利だ。まばたきにも足りない一瞬の決断に、地道に積み上げた長年の経験と技術が硬く凝縮され、勝敗を分ける。
だから30年も続いている。
ぷよの究極が理の外側にあるのなら、どこまで登っても頂上は理の彼方にかすんで見えない。最強リーガーはそれでも登り続ける。
シーズン3、挫折を経て大復活を果たしたぴぽにあは、今度こそ最強リーグの台風の目となるか? 彼の勇猛果敢なぷよが見たい。ダイナミックにぷよを動かして、マッキーやmomokenを翻弄するところが見たい。
否、それだけではない。ぷよぷよファンは貪欲だ。理詰めで崩していくmomokenも見たいし、圧倒的超火力で押しつぶすマッキーも見たい。
deltaの超絶的な本線構築にびっくりしたい。ともくんの無慈悲な一撃に驚きたい。
そして、ヨダソウマの一挙手一投足から目が離せない。
すべての瞬間が劇的だ。
ぷよぷよの勝負は最初から最後まで、ぎちぎちに物語が詰まっている。
さいごに、ほんとにぴぽにあさん最高でした。SAKIさんのぷよも大好きなので複雑な思いで見ておりましたが、最後泣きそうになりました。
また背負っているものが増えたかもしれません。それでも果敢に前をめざす姿に心底憧れております。シーズン3も応援してます!