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JeSUのセミナーに参加して感じたことと、福祉側にもeスポーツ側にも良かったら読んでもらいたいなという、一つの提言

by
ヌリトオ
ヌリトオ
去る2月1日、一般社団法人日本eスポーツ連合様により開催された、
「からだに不自由のある方へのeスポーツ支援者入門セミナー」に参加しました。

ぷよキャンへの投稿が適切なのかどうかは少々悩んだのですが、
セミナー会場ではぷよぷよeスポーツもありましたし、ぷよらーさんやテトラーさんも知っていて損はなかろうと思いますので、
そういうニーズもあるんだなという、ちょっとした読み物ということでひとつお付き合いください。


セミナー全体の流れとしては、資料をいただいたり講座を聞いたり、
実際にいくつかのタイトルをプレイしたり特殊なデバイスを試しつつ、
eスポーツにおける障がい者支援の現状と課題、アクセシビリティ技術の理解と実践、
障がい疑似体験を通じたeスポーツ支援スキルの習得、最適なeスポーツ環境の構築と支援の実践、
などなど、非常に充実した内容でした。

いくつかのグループに分かれて体験やディスカッションをしたので、全員の肩書は把握していないのですが、
eスポーツ関連団体さんも居たものの、特別支援学校の方、身体障害者福祉協会の方、作業療法士の方など、
セミナーのタイトルからして当然ですが、福祉や医療の専門の方々が多かったように思います。
私も健康ゲーム指導士養成講座を受講していたり、シニア向けeスポーツ体験会の開催はしているものの、
どちらかというとイベント運営とか、そもそもプレイヤー側の人間なので、
この顔ぶれに交じって物知り顔で座ってて大丈夫やろか……などとちょっとソワソワしながら過ごしました。
尚、作業療法士の略称はOTだそうで、ちょいちょいパンケーキがちらついてしまいました。

また、プレイヤー目線でそれなりにeスポーツ関連の情報を追ってはいるので、
JeSUの担当者さんの講座でeスポーツの現状やJeSUの活動の説明などもありましたが、
国スポの話のときは、そうそうゆうきさんとともくんさんが凄いんですよとか、
日本eスポーツアワードの話のときは、そうそう第1回ではあめみやたいようさんが最優秀マインドゲームプレイヤー賞だし、
SAKIさんもぴぽにあさんもファイナリストだったよねとか思いながら聞いていました(講座でそこまで細かく説明はされていない)。
あとは視線でゲームをプレイする体験のところにアイトラッカーがあったのですが、
視線計測で使うやつだ!などと、内心では何かにつけてぷよぷよ準拠で反応していました。


なんやかんや色々体験したりお話を聞いたりしましてかなりいい経験をさせていただきましたが、
福祉や医療の現場にどのようにeスポーツを取り入れるか、という立場ではなく、
プレイヤー側、イベント運営側だからこそ気がついたこともあったかもしれないと帰途でつらつら考えていたので、
その辺りのことを忘れないうちに書きなぐっておこうかと思います。
もしかしたら、福祉側とeスポーツ関連団体側の双方にプラスになる内容もあるかもしれません。


・私が感じた課題、1 ゲーマーが自然に備えている最低限必要なeスポーツの経験を、福祉側が持っていない場合がある

「eスポーツプレイヤー」というと福祉側から見たときにちょっとハードルが高そうな気がするので、
あえて「ゲーマー」という語を用いました。ゲーマーの定義とか細かいことはここでは問題ではないので置いておきますが、
eスポーツ選手的な技量とかは関係なく、「放課後や週末に友だちとゲームしてよく遊んでた」くらいで大丈夫です。

ある程度のゲーム経験がある人なら、わざわざ説明されなくてもなんとなくわかること、というのが、
もしかしたら結構あるのかもしれません。

たとえば、今回のセミナー会場では、某格闘ゲームや、某サッカーゲームや、某リズムゲームや、某ぷよぷよがありました。
その格ゲーやサッカーは、聞いたことはあるけど私はこの度初めてプレイしたんですが、なんとなくこう、わかるじゃないですか。

体力ゲージがなくなったら負けとか、対空技とか飛び道具とかあって、なんたらゲージが溜まってるときになんかしたら超必殺技的なものが出るとか、
そもそも、キャラクターセレクト画面で好きなキャラを選んで決定ボタンを押すとか、モダンとかクラシックとかカーソルをここに合わせて選択するのかとか、
タイトルによってシステム的な違いはあれど、基本的なことは聞くまでもない、という人は多いと思うんですよ。

あるいはサッカーゲームなら、丸で囲まれて矢印がついてる選手を自分が動かしてるんだなとか、
ボタンによってパスとかシュートとか割り振られてるだろとか、ボタン長押しでゲージが動いたらキックの強さかなとか、
暗黙の了解というか、こういうジャンルならまあこういう操作感だよねみたいな、あるでしょ?


セミナー中に実際にあったことなのですが、健常者とか障がい者とかいう以前の段階で、
単純にゲームで遊んだ経験の少ない大人が、どうやらそれなりに居ます。

なにかの選択画面でなんか間違ってキャンセルボタンを押してしまったときに、
そもそもなんで画面が切り替わっちゃったかもわからないし、どのボタン押せば次画面に進むかわからないし、
画面の光ってる部分にカーソルがあるということももしかしたらわからない人もいたかもしれません。
キャラクターセレクトとかゲームスタートとかそれっぽいところを探して決定ボタン押せばそれで解決というところを、
JeSUの担当者さんが操作してくれる、という一幕がありました。
福祉側がそういう躓き方をする場合がある、というのは、プレイヤー側からしたら結構衝撃的です。

職場で、家にswitchやPSがありますとかそんな話をする機会はあまりないかもしれませんが、
医療や福祉、介護の現場で、「普通にゲームできます」というのは、案外需要があるように感じました。


・私が感じた課題、2 eスポーツを福祉や介護の現場で採用する場合の、初期コストが高い

何もないところから始めようと思った場合に、モニター、ハード、ソフト、コントローラーが最低でも必要なうえ、
今回のテーマが「からだに不自由のある方へのeスポーツ支援者入門セミナー」とあるように、
特殊な、そして高額なデバイスが様々にあります。
しかも、利用者さんの人数や、一回のイベントでどれくらいの回転率を想定するかによって、
機材が1セットだけでは足りないということもあるでしょう。

自治体によっては補助金や助成金が出るところもあるでしょうが、勿論そうでないところもあります。
しかも、まずは一回試してみないことには、利用者さんがeスポーツのプレイを楽しんでくれるかどうかもわかりません。
とりあえずちょっと試してみたいという段階で機材一式を揃える予算が出るかどうかというのは、
これはかなり難しいのではないでしょうか。

また、ほとんどゲームをやったことのない職員が利用者さんにeスポーツ体験をしてもらおうと思ったら、
まず自分が通常のコントローラーで、別にうまくはなくてもそれなりにプレイできなければ話になりません。
日常の業務をこなしながらeスポーツのプレイスキルを習得するというのもなかなか酷ですから、
時間的なコストをかけられるかどうかというところもあるでしょう。


・私が思った解決策

上記課題に対して、セミナーのディスカッションの間にはパッと考えをまとめられなかったのですが、
そもそも福祉側でなくeスポーツ側の立ち位置から見てみると、結構なんとかなるんじゃなかろうか、
などと安直に考えられるところもありそうです。

課題1の、そもそもゲーム経験が少ない部分に対しては、そこらに経験者いるでしょ。
福祉や介護の現場だけでやろうとすると、職員が新たに「eスポーツを普通にプレイできる」というスキルが必要になりますが、
eスポーツ部を擁する高校も増えているし、eスポーツ専門学校だってあるし、福祉系の大学でeスポーツを取り入れているところもある。
あるいは、地域でeスポーツイベントを運営している団体や、eスポーツチームも数多くある。
そういうところに、福祉側の人からとりあえず協力を相談してみてもいいんじゃないでしょうか。

これまでeスポーツに接点のなかった福祉側の方々からすると、
日本eスポーツ連合という組織やその支部が全国に(ない県もあるけど)あるということや、
eスポーツチームや関連団体、eスポーツの部活動があるということも知らないかもしれない。
知らなければ、相談してみようかなという発想にも辿り着きません。
だけどそういう組織なら当然、特殊な機材はないまでも、最低限必要なハードやコントローラーはあります。
ついでに課題2もほぼ解決ではありませんか。


たとえば私のところのEYE・ONでは、そもそも高齢者向けeスポーツは主軸の一つなので、
近所で相談されればちゃんとサポートするし、現にもう自治体の保健福祉課や老人クラブと連携しての企画が動いています。
週イチでボランティアでお願いしますとか言われたら流石に断りますが、ちょっと試してみたいという話なら全然アリです。

また、他のeスポーツチームや関連団体にしても、活動の周知って課題の一つとしてあると思うんですよ。
地域によってeスポーツの浸透具合にはまだまだ差があると思いますけど、
そもそもeスポーツってなんやねんとか、集まってゲームして遊んでるだけでしょとか、
まあまあ心無いことを言う人は少なからずいると思います。私も言われたことあります。

ところがそこで、eスポーツを活用した地域貢献や福祉活動をしています、ということになると、ちょっと話が違ってくるじゃないですか。
フィジカルスポーツなんかでも、地元のクラブチームが、選手としてのミッションは勿論大きな試合とかで勝利することだとしても、
年に何回か地元の子どもたちを集めてサッカー教室をしますとか、地域のお祭りにボランティアで出展しますとか、
そういうものを通して「我が町のチーム」になり、地域に根差した存在感を増していくこともあるでしょう。

eスポーツもそんな感じで、選手としての目的はやはり大舞台で勝利の栄光を掴み取ることかもしれないけど、
その地域にもし福祉系eスポーツの潜在的需要があるなら、eスポーツ側から働きかけてもいいんじゃないかくらいに思います。

打算的な話をするなら、学校のeスポーツ部や、地域のeスポーツ団体がボランティアで福祉イベントをやりましたといえば、
今のところはそこそこ話題になるじゃないですか。
短期的には福祉系eスポーツ関係の活動は収益にはならないかもしれませんが、
部活動の実績としても悪くなさそうだし、ボランティアでも話題になればスポンサーへのアピールポイントになるかもしれない。
もっと言えば、「eスポーツそのものの社会的価値」を高めていくブランディングができるかもしれない。


そんなことを考えたら、もしeスポーツ側が福祉側のニーズに対して気安く引き受けてくれるようなマッチングができれば、
福祉側は初期費用を抑えて日常業務にもあまり支障を出さずに新たなアクティビティとしてeスポーツをお試しで採用できるし、
eスポーツ側は手持ちの機材と時間だけ使ってくれれば地域貢献として一定の話題になって協賛が増やせるかもしれないし、
なによりその流れによって、今までeスポーツに触れてこなかった人に届けられる体験や何かがあるかもしれない。三方良しです。

言葉を選ばずいえば、近所の選手が何かの大会で優勝したとしても、そもそも興味がなく情報すら届かない人には「ふーん」ともなりませんが、
なんかよくわからんけどうちのじーさんがeスポーツ体験をしてからゴキゲンで、次回も楽しみにしている、なんてことになれば、
eスポーツに触れたことがなかった人にとっても、急に距離が近づくというか、「我がこと」になるかもしれません。
それは、お金にはならないかもしれませんが、お金を出しても手に入らない価値を作り出すことになるのでは、とか。

無論、チームや団体それぞれによって目的は異なりますから、
我々のミッションのためには福祉やボランティアには時間も人手も割けないのだ、ということもあるでしょう。
それはそれで、各自の理由があるのですから良いも悪いもありません。ボランティアは強要するもんでもなし。


ともあれ、思いついた端から書いていったのでいまいちまとまりませんが、
健康ゲーム指導士養成講座を受講しており、高齢者向けeスポーツイベントを開催しており、
腕前はさておき現役のぷよらーであり、JeSUのセミナーに赴いてきた、現場からは以上です。

尚、セミナーの実施についてのお知らせもJeSUのサイトにありますので、よければ併せてご覧ください。
https://jesu.or.jp/contents/news/news-250204/
更新日時:2025/02/04 23:15
(作成日時:2025/02/04 23:09)
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